税金分割相談と差し押さえ移行について
税理士の吉田です。
複数年無申告の場合は申告年分も最長5年分とかなり納税額も大きくなります。
過去の所得は生活費等で消えてあまり貯蓄が無いというかたも多く、その場合は税金を分割交渉することになります。
分割交渉がうまくいけば良いのですが、支払いが滞ると「差し押さえ」になることもあります。
手順を解説していきます。
税金差し押さえまでの流れ
督促状の発送
期限後申告の場合は、申告した日が納期限になります。
納期限を過ぎると督促状が発送されてきます。国税は納期限から50日以内に発送されます。
原則督促状が送付されると、10日以内に支払いができなければ差し押さえに移行される可能性があります。
まず、支払いが難しいと見込まれる場合は、早めに分割相談に出向くことが重要です。
万が一督促状が届いたら、すぐに連絡すべきです。
支払い催告
支払いがないまま時が経過すると電話・文書・訪問という形で催告が行われます。
税務職員は公務員なので、声を荒げるとか無鉄砲な言い方はしないことが殆どです。
ただ、優しい言い方かも知れませんが、厳しいことは言われます。
催告される時点で相当納税意識が低いとみなされてしまいますので、やはり催告前に対応すべきでしょう。
差し押さえ予告
差し押さえの予告も、電話・文書・対面で行われます。
原則的には予告されることになっていますが、一定の事情がある場合は差し押さえ予告なしで差し押さえることが可能です。
私の過去の経験でも予告なしで差し押さえられたと聞いたことが無いので、原則予告はされると考えて良いでしょう。
差し押さえを解除するには全額納付することが条件です。
さすがに滞納してきていきなり全額納付は難しいので現実的ではないですね・・・。
きちんと計画立てし分割交渉を行うことで差し押さえを回避できることもありますが、かなり難しいと認識した方が良いでしょう。
また、分割納付中でも約束した期日に何の連絡もせずに支払えない場合も、差し押さえに移行することがあります。
税務署としては納税者の「納税意識」があるかどうか注視しています。
あまり誠意がみられないようなら、早めに財産を抑えた方が良いと考えるのが自然です。
差し押さえの財産
差し押さえの前には財産調査が行われます。
その後、基本的には預金が差し押さえになります。
ただし、預金に残高が少ないケースが多いので、別の財産を差し押さえることを既に検討していると考えて良いでしょう。
事業者の場合は、売掛金を差し押さえることが多く見受けられます。
売掛金の場合は動産・不動産と違って換金する必要もなく、預金に次いで簡単に徴収できる方法です。
売掛金差し押さえは、得意先(売上先)に差し押さえの連絡がきます。これは裁判所からの差し押さえ命令のため、得意先も拒否できません。
今後の取引に影響を及ぼす可能性が高いので、差し押さえ予告されたらすぐに得意先に連絡すべきです。
得意先の信用を無くし取引の打ち切りも十分あり得ます。
差し押さえで一番ダメージがくるのがこの売掛金差し押さえなので、「差し押さえ=得意先との取引停止」くらいに考えた方が良いと思います。
また、当然動産・不動産を差し押さえることもあります。
税金分割納付の手順
差し押さえにならないために、まずは税金分割交渉を行います。手順を記載したいと思います。
分割納付の申し出
まずは税務署に連絡・出向き、分割したい旨をお話します。
滞納額が少なく分割期間も短い場合は、口頭ベースで分割が認められます。
その場合は、税務署の方で分割金額が記載された納付書が発行されますので、その納付書を用い期日までに支払いを行います。
換価の猶予申請
口頭ベースでの分割が認められない場合は、本格的な分割交渉に入ります。
換価の猶予申請の提出を促されますが、これを提出し認めてもらう必要があります。
申請書の他に、滞納税額が100万円を超える場合には財産目録、収支の明細書の提出も必要です。
ざっくり言うと、今後の売上見込みや利益の見込みから支払える金額を算出し、今後1年間の分割納付計画を立てるような様式になっています。
数字で表すので税理士を付けている方は相談されると良いでしょう。
また猶予の延長は、当初の猶予期間と合わせて2年間可能です。(当初の猶予期間に延長申請を行います。)
3年目以降は税務署の裁量で猶予を認めてもらうため、できる限り2年である程度滞納額を減らしていきたいところです。
最初の換価の猶予申請は納期限から6か月以内に申請書を提出する必要があるので、早めに行うようにしてください。
まとめ
まず、税務署へ出向き分割相談、換価の猶予申請を行うことです。
また、うまく分割が認められても期日までに払えない場合は、期日前に必ず税務署に連絡を入れることが重要です。
その時に「なぜ支払えないか?」をきちんと説明することも大切です。
(予定していた売掛金が入ってこない、売上が少なかった、突発的に経費がかかってしまいそうなど)
これをしないと猶予申請の取り消しや、最悪差し押さえに移行される可能性があります。
実際に連絡を怠り、差し押さえに移行されそうになった案件も見てきました。
税務署は納税者の「納税意識」を注視しています。
あまりに不義理な対応をすると税務署も鬼になりますので、ご注意ください。
弊所では、期限後申告後の換価の猶予申請作成のお手伝いも行っています。(顧問契約以外の場合は有料の場合あり)
無申告を解消するのがゴールではありませんので、その後もお力になれればと思います。